自分の土地なのに、他人の承諾が必要?
Yさんには父から相続した実家の土地がありましたが遠方に嫁いだため十数年放置後、売却して自宅の新築費用にあてようと知人の不動産業者に相場を調べてもらったところ一頃昔よりも近隣には住宅地が立ち並び土地価格も上昇、マンション用地として想像以上の値段で売れることがわかりました。 それならば新しい家は思いどうりの住みやすい二世帯住宅にと、プランニングには建築士やデザイナーを交え、ご自分でもパースを描くなど具体的に話を進めていました。 ところが不動産業者から連絡があり、売却予定の土地全部に地役権が設定されており土地のど真ん中に他人の下水管が埋設されているとのことで、売り物にならないとの連絡があったのです。
土地が売れなければすべての夢はただの夢想に終わってしまいます。何とかできないものかと弊社に相談にこられました。
古い資料をよく調査してみるとYさんのお父さんが生前、土地の一部を業者に売却した折に下水道管が埋設されており、その折に地役権が設定されていました。お父様はおそらく詳しい説明もなく言われるまま書類に実印を押印したのでしょう。その土地には12戸の住宅が建っており、これでは自分の土地でありながら実質何をするにも要役地権者の承諾を得なければらずのっとられたも同然です。当然建物など建てられません。
下水道管の位置と土地の形状からマンション用地としてではなく、戸建て住宅用地として再生させる提案をさせていただきました。
地役権を下水道管の位置のみに減縮し、地役権図面を作成して登記しておけばすべての人の権利は保全されます。
しかし、12軒すべての承諾となるとさすがに大変です。引越ししてきて事情を知らない方が多い上、ほとんどの人が銀行の担保として抵当権がついていました。つまり銀行の承諾も必要なのです。おまけにこの住人はお互い敷地のことや、ペットの鳴き声ことで仲がわるく不調和でした。
しかしこのような問題は時間はかかりますが誠実に説明することで必ず道がついてゆくものです。
このケースも10ヶ月かかりましたが何度も集まってもらい誠実に説明させていただいた結果、無事全員承諾書に実印と署名、それに印鑑証明書もいただくことができました。
Yさんも、多少計画が遅れましたが今は素敵なマイホームに二世帯で仲良く暮らしておられます。
そして、余談ですが、以前はお互い近所でありながら仲が悪く無関心だった、件の12軒のみなさんもこの件を通していまではご近所付き合いが始まったとのことで、嬉しい限りです。